酔ったら、
「宮地さん、駄目ですよ。ちゃんと周りをよく見なきゃ」
「見てる。その中でも一番、目につくのは来栖なんだから、仕様が無いだろ」
すっかり真っ赤になった頬と、真っ直ぐに見つめてくる瞳に、思わずドキリとする。
さらに、言われた台詞を頭の中で反芻させる。
私には、あまりにも甘過ぎて、おかしくなりそうだ。
それでも、構わず先輩は言葉を続ける。
「来栖は人のことを考え過ぎる。もっと自分にも気を遣え。とか言っても、お前は自分のことを考え始めたら、人より劣ってるってニュアンスで話し出すだろ」
「そりゃ、人より優れては──」
「来栖は、自分が思ってる以上に、良い女だよ」
突然の言葉に、息が止まる。
全く馴れない言葉に、軽く混乱状態になり、言葉が声にならない。
素直に言えば、もちろん嬉しい。
でも、やっぱりいまいち自分の中では肯定しきれなくて、照れ隠しに烏龍茶へ手を伸ばした。
「おい。ちゃんと聞いてるか?」
「は、はい。ありがとうございます」
「もしかして、俺のこと、気持ち悪いとか思ってる?」
「そ、そういう訳ではないです。ただ……」
「ただ?」
「どんな反応をしたら良いか、分からなくて」
色んなことを言われて、頭の中が整理出来ない。
こんなに異性から、好意を向けられたことが無いから。
私がちょっとした混乱状態でいると、先輩の溜め息が聞こえてきた。
それに思わず、肩が跳ねた。
「すみません……」
「別に、謝らなくていいよ」