その手が離せなくて
「ちょっと、待って・・・・・・」
震える声を押さえて、冷静でいようと自分に言い聞かせる。
思考回路をフル回転させて自分が今どこから走ってきたか考えるけど、検討もつかなかった。
何も考えずに、ただ我武者羅に走り抜けてきたんだから、当たり前だ。
荒い息を吐きながら、キョロキョロと辺りを見渡す。
それでも、見覚えのある景色も、看板も、灯りも、やはり一つも見当たらなかった。
「どこ・・・・・・なの」
何も見えない恐怖にかられて、再び足を前に出す。
じっとなんて、していられない。
小さな音にすら恐怖を感じる。
助けて。
助けて。
誰か――。
ガサガサと木々をかき分けて歩く。
それでも、次第に早歩きから駆け足に変わった。
じっと助けを待った方がいいのは頭では分かっているけど、そんなの無理だ。