その手が離せなくて

「きゃぁっっ!!」


踏み出した足が、突然ずるりとバランスを崩す。

昨日降ったであろう雨でぬかるんでいたんだ。


驚いて声を出した瞬間、バランスを保てずに勢いのまま倒れ込む。

あっと思った瞬間には、目の前には斜面が見えた。

必死にどこかに掴まろうとするが、間に合うはずもない。

走ってきた勢いを殺す事なく、そのまま暗闇の中に落ちた。


途端にゴロゴロと転がり落ちていく。

無意識に頭を庇うけど、痛みが体中を覆う。

勢いを殺す事なく、落ちていく。



堕ちて、いく――。



最後に見たのは、真っ暗闇の中に降る白い雪だった。


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