その手が離せなくて
◇
「――んっ」
不意に目が覚めて、重い瞼を開ける。
ぼんやりと開けた世界は真っ暗で、何も見えない。
どうして自分がここにいるのか、ここで何をしているのか一瞬分からなかった。
それでも、徐々にハッキリする意識の中で今までの事をぼんやりと思い出す。
宴会で一ノ瀬さんの奥さんの事を聞いて。
逃げる様に外に飛び出して。
我武者羅に走って――・・・・・・。
そこまで考えて、ようやく現状を把握する。
一気に血の気が引いて、勢いよく体を起こした。
それでも。
「痛っ」
突然体中に走った激痛に悲鳴を上げる。
起こしかけた体を止めて、痛みが激しかった足首を押さえた。