その手が離せなくて

息が止まりそうな痛さに耐えながら、唇を噛みしめる。

恐る恐る自分の体を見るけれど、物凄い出血などはしていなかった。

所々に切り傷があるくらいで、どうって事ない。

一番酷い怪我といえば、この足首だろう。

きっと折れてはいないだろうけど、捻挫は確実にしている。


泥だらけになった服を見つめながら、思考回路をフル回転させる。

辺りをキョロキョロと見渡したけど、見えるのは同じ様な景色ばかり。

気絶する前と同じ、木々がただ天に伸びているだけ。

違うものと言えば、転げ落ちてきたであろう崖が傍にあるくらい。


「誰か・・・・・・誰かっ!!」


途端に恐怖が再び湧き上がってきて、大声でそう叫ぶ。

それでも、もちろん返事なんて聞こえるはずもなく、暗闇の中に溶けて行った。


「助けてっ。誰か・・・・・・」


不安と恐怖で涙が無意識に落ちる。

寒さなのか何なのか、体がガタガタと震えだして、思わず自分の体を強く抱きしめた。

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