その手が離せなくて
傷つくのは分かっている。

だって、結ばれる事はないのだから。

この想いが報われる事はないのだから。

ハッピーエンドなんて、ないのだから。


ただ都合のいい女として扱われる恋。

誰にも言う事のできない恋。

綺麗な終わりなんて、ない恋。


だけど。


そうと分かっていても、繋がっていたい。

私に向けられる笑顔が、例え誰かのものでも――。


彼を思い浮かべた瞬間、会いたくなった。

ただただ、会いたくなった。


冷え切った体を抱きしめて、俯く。

パタパタと零れる涙が、袖を濡らしていく。


会いたいよ、一ノ瀬さん。

騙されたって、いい。

都合のいい女でもいい。


ただ、会いたい。

会いたくて堪らないの。

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