その手が離せなくて
『また、行けそうな日連絡する』

「うんっ!!」


まさか一緒に行けるとは思っていなかった。

一緒に見れたらいいな、とは思っていたけど、そんなの夢のまた夢だって諦めていた。


今まで、もちろん人目を避ける様に、あまり人が集まる場所は避けていた。

イベントだったり、大通りだったり。

だから、嬉しかった。

少しでも、私の事を想ってくれているのかも、と思って。


『仕事終わりになるけど、いいか?』

「私、夜桜の方が好きなんです」

『俺も』


彼の声を聞き逃すまいと、ギュッと耳に携帯を押し当てる。

無意識に零れる笑みが、心が幸せだと叫んでいる証拠。


『じゃ、仕事頑張って』

「一ノ瀬さんも」



春がきた。

あなたと過ごす、初めての春が――。

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