その手が離せなくて
「本当っ!?」
次の日の夕方にかかってきた1本の電話。
画面に映し出された名前を見て、慌てて通話ボタンを押した。
相手はもちろん一ノ瀬さん。
来週の金曜日の仕事終わりに夜桜を見に行こうとの誘いだった。
「ふふっ」
電話を切った瞬間、自分でも気持ち悪いなと思う様な笑みが零れた。
ギュッと胸に携帯を抱きしめて、嬉しさを噛みしめる。
初めてかもしれない。
こんな、まるでカップルみたいなデートは。
デートなんて言っちゃダメなんだろうけど、それでも一緒に桜を見れる事が嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「夜だけど、お弁当でも作ろうかな」
ニヤニヤが止まらなくて、まさに頭の中が一面お花畑だった。
恋をすると女は変わるっていうけど、本当みたい。
彼に出会う前の自分の事なんて、もう思い出せなかった。