その手が離せなくて





「ふんふんふんっ」


お昼時のキッチンに鼻歌が漏れる。

待ちに待った週末が、ようやくやってきた。

こんなにも一週間が長いと感じたのは初めてだった。

指折り数えた日々が、果てしなく長かった。


チラリと壁にかかるカレンダーを見れば、今日の日付の所が赤い丸でグルグルと囲まれている。

ニヤニヤしながら、ここに書き加えた一週間前の自分がありありと浮かんだ。



今日は会社を午後から休みにした。

彼には内緒でお弁当を作ろうと思ったから。


料理は昔から、お母さんに叩き込まれたから得意。

1人暮らしだから、いつもは簡単なものしか作ってなかったし、誰かに食べてもらうなんて久しぶりだった。

だから、もう嬉しくて嬉しくて堪らなかった。


「カキフライとトマト以外に食べれないものってあるのかなぁ」


メニューを頭の中で描きながら、そんな事を呟く。

そういえば私、まだまだ彼について知らない事ばっかりだ。
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