その手が離せなくて
◇
「ふんふんふんっ」
お昼時のキッチンに鼻歌が漏れる。
待ちに待った週末が、ようやくやってきた。
こんなにも一週間が長いと感じたのは初めてだった。
指折り数えた日々が、果てしなく長かった。
チラリと壁にかかるカレンダーを見れば、今日の日付の所が赤い丸でグルグルと囲まれている。
ニヤニヤしながら、ここに書き加えた一週間前の自分がありありと浮かんだ。
今日は会社を午後から休みにした。
彼には内緒でお弁当を作ろうと思ったから。
料理は昔から、お母さんに叩き込まれたから得意。
1人暮らしだから、いつもは簡単なものしか作ってなかったし、誰かに食べてもらうなんて久しぶりだった。
だから、もう嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「カキフライとトマト以外に食べれないものってあるのかなぁ」
メニューを頭の中で描きながら、そんな事を呟く。
そういえば私、まだまだ彼について知らない事ばっかりだ。