その手が離せなくて













待ち合わせの時間が迫り、1人いつもの公園のベンチに座る。

太陽はすっかり消えて、今では月が世界を彩っていた。

視線を隣のバックに移せば、先程鼻歌交じりに作ったお弁当が見えた。

ちなみにメニューは、エビチリ・だし巻き卵・ミルフィーユカツ・アスパラベーコン。

どれも失敗せずに無事作る事ができた。


「桜綺麗かなぁ」


にやける頬のまま、まだ温かいお弁当を見つめて呟く。

東京はタイミングよく、ちょうど桜が満開になった様子。

いろんな所で薄ピンクの花が見えて、多くの人々が足を止めてその綺麗にライトアップされた桜を見ている。


「あと10分か」


しきりに見ていた時計も、ようやく待ち合わせの10分前になった。

いつ来てもおかしくない様に、最後にもう一度身なりを確認する。

そんな時――。

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