その手が離せなくて
「あっ」
携帯がメールを受信した音が響く。
きっと、一ノ瀬さんからの仕事が終わった。という知らせだろう。
今にも飛び跳ねそうな心を押さえて、慌ててメールの画面を開いた。
だけど――・・・・・・。
『悪い。今日行けそうにない』
開いた画面を見た瞬間、息が止まった。
思考が一気に停止して、世界が音を無くす。
心臓が痛い程、締め付けられる。
『どうかした?』
今にも泣き出しそうになる中、急いでメールを返す。
送信し終えると、ウロウロとその場を歩き回った。
なんだか、じっとなんてしていられなくて。
すると、しばらくしてから再びメールが届く。
だけど、急いで画面を開いた瞬間、世界が凍った。
持っていた携帯が今にも手から滑り落ちそうになって耐える。
『――嫁の帰国が一日早まって、帰ってきたんだ』