その手が離せなくて
突然の事で頭が考える事を止めている。

ただ声も出せずに、目の前の女性を見つめた。


そんな私を見て、今まで能面のような表情だった女性が、突然ふっと嘲笑うかの様に笑みを作った。

そして、私の全身を舐める様に上から下まで見つめて、小さく溜息を吐いた。


どこか吐き捨てるように。

汚いものでも見るかのような視線で。


「あなたのどこに魅力があるのか、私には1つも分からないわ」


その言葉に、頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受ける。

一瞬にして、まさか。という考えが脳裏を巡る。

嫌な予感が一気に大きくなる。

ガタガタと体が震えだして、心臓がひゅっと高い所から落ちた時の様な感覚に陥る。



まさか。

まさか。



「言葉も出ないみたいね」


ガタガタと震える私を見て、ふっとその真っ赤な口紅が塗られた唇を歪めた女性。

そして、キッと私を睨み付けて、右手を上げた。
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