その手が離せなくて

「ありがとう。本社には私から連絡を入れておくね」


資料を読み終わって、隣に立ったままだった俊君を見上げてニッコリと笑う。

どこか探る様な視線を向けられたけど、得意の笑顔でかわす。


「俊君は入社してどれだけだっけ?」

「今、半年です」

「そっか。仕事はどう? 慣れた?」

「・・・・・・いえ。昨日も失敗しちゃって」


私の質問に、苦笑いを浮かべた俊君に隣に座る様にベンチをトントンと叩く。

すると、まるで犬の様に一瞬パァっと顔を綻ばせた俊君が勢いよく私の隣に腰かけた。

その人懐っこい姿に、思わず笑みが零れる。


「始めはみんな誰だって失敗するよ」

「――」

「やった事のない事だもん。当たり前」


青い空を見上げて、小さく笑う。

そんな私につられる様に空を見上げた俊君を横目に言葉を続けた。


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