その手が離せなくて
「俺は今会社の飲み会の帰り。望月さんも――そんな感じ?」


ポカンと立ち尽くす私の顔を見て、ニッコリと笑みを作った彼。

その声に慌ててボサボサだった髪を慌てて直した。


「萌と。・・・・・・えっと一緒に合コンパーティーに行っていた子と飲んでて」

「へ~。さっき微かに鼻歌が聞こえたけど、随分楽しい飲み会だったんだな」

「――っ!!」

「でも、こんな暗い道を1人で歩くのは感心しないな」


鼻歌を聞かれていた事に一気に羞恥の感情が湧きあがったけど、それでも、その後に言われた言葉に胸がきゅっと締め付けられた。

ほんと、彼と話していると心臓が忙しなく動くから困る。

いつもサラッとそんな女心をくすぐる事を言うもんだから、心の準備のできていない私はいつもフリーズしてしまう。


「いつも通ってる道だから大丈夫ですよ?」

「もう少し望月さんは自分が女だって事、理解してほしいもんだな」

「え?」

「男に襲われたら、女の人なんて一捻りだぞ?」


ほら、また。
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