その手が離せなくて
初めて触れた彼の体温。
まるで電気が走ったように、ビリビリと体を熱くする。
それでも、言葉が落ちない。
突然の行動に、自分自身が一番驚いている。
それでも、掴んだこの手を離したくない。
見上げた彼の顔を見て、理性が一気に飛ぶ。
触れていたい。
離れたくない。
もっと一緒にいたい。
もっと、私の事を知ってほしい。
こんな指先だけじゃなくて、もっと彼に触れたい。
そんな気持ちが泉のように湧き上がってきて、理性を壊していく。
じっと私を見つめる、その瞳を見つめ返す。
初めて会った時と変わらない、ビー玉の様な瞳。
その瞳に吸い込まれる様に、ゆっくりと自分の体を持ち上げて、その唇を塞いだ。
「――送ってくれた、お礼です」
まるで子供の様な、触れるだけのキス。
擦れそうな声を落として、ゆっくりと瞳を開けた。
恥ずかしくて、自分の顔が真っ赤なのを感じる。