呆れるくらいに君が恋しい。
そんなのとっくに知ってるし、
佐和田先輩を見つめる先輩を見て
寧ろ毎日断られてる気分だし。
先輩が俺のことは見ない時点で
相手にしてないって知っていた。
「そんなのっ、分かってる!」
気づいたら目で追っていて
姿が見えなくても声だけで分かる。
似てる容姿の人がいただけで
つい後ろを振り返っていて
いつでも君の姿を探してる。
君の仕草も声も表情も癖も笑い方も
どうしようもなく
恋しくて恋しくて恋しくて
俺に勝ち目はないのに
俺の事なんて眼中にもないのに
好きだから仕方ない。
そんな気持ちが昂って
いつの間にか先輩の肩を押していて
両腕を先輩の顔の横に置いて
「そんなのっ!」
分かってる!
そう言おうと思って
でも、先輩の顔を見て
先輩を押し倒していることに気づいた。
「…ごめん。」
驚いた表情の先輩を抱き起こそうとして
腕を伸ばして
でも先輩に触れる事に一瞬躊躇ってから
優しく掴んで抱き起こした。
ごめん、と、もう一度呟いて離れる。
気まづい沈黙が俺らを包み込んでいた。
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