呆れるくらいに君が恋しい。
そんなこんなでバレンタイン当日。
薫にチョコなんてないよー、なんて言って
焼きもち焼かせようかと思ったのに
実際は私が焼いてる。
「それ、なに。」
「…下駄箱に入ってた。」
私という“彼女”がいるのに
大量のチョコ。
「分かるのは、ちゃんと返すよ。」
なんて言ってくれても
やっぱりちょっと焼く。
そんな私を見て
「優愛からはないの?」
って聞かれて
「ないよ!」って返すと
君は、ちょっと悲しそうに笑った。
「そっか。」
その顔に思わず「あるよ!」って
言いたくなるけどそれはこらえた。
だって、だって、
…サプライズだもん。
少し機嫌の悪くなった君は
「…寝てくる。」って言って
教室を出ていく。
「桐谷ー、教科書貸してー!」
「黙れ。」
違うクラスの男子に冷たく返して
廊下を歩き出すから、
本気で嫌われたのかと焦った。
「…待って!」
思わず追いかけて君の服の裾を引っ張る。
「お、怒った?」
そう聞くと、「怒ってないよ。」って
小さく笑って私の頭を撫でるけど、
それはやっぱり本当の笑顔じゃなくて
怒ってはないけど、ちょっと不自然で。
「眠いからごめんね。」
って手を離される。
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