クールな公爵様のゆゆしき恋情2
私は歩みを速め、ふたりの前に立つ。
まずは護衛騎士に視線を送り少年へ危害を加えないよう合図をした。
それから少女の方を向き、声をかける。
「恐がらなくて大丈夫よ。お兄さんに少し話を聞く間、向こうで待っていてもらえる?」
恐怖を取ってあげたくて、出来る限りゆっくりと優しい声で言うと、少女は涙の溜まった目をぱちぱちと瞬かせる。
「……お兄ちゃんに乱暴しないで」
「絶対に乱暴しないわ。約束する」
にこりと笑ってそう言ってから、アンナに目配せする。
長年仕えてくれているアンナは私の意図に直ぐに気付き、少女をあやしながら少し離れた所に連れて行ってくれる。
それを見届けてから、私は少年の方に目を向けた。
騎士の拘束が緩くなった為か、少年はもう暴れてはいなかった。
まるで見極めるような目をして、私をじっと見つめて来る。