クールな公爵様のゆゆしき恋情２

「私に話があるのね？　それともフェルザー公爵にかしら？」

そう問いかけると、少年はこくりと頷き口を開いた。

「公爵夫人に話があって来たんだ」

「知っているかもしれないけど、私はラウラ・フェルザーよ。あなたは？」

「知ってる。だから馬車を停めたんだし……俺はルカ。あっちにいる妹はエミリ」

「そう……ではルカ。こんな無茶はしちゃいけないわ。走っている馬車の前に飛び出すなんて、とても危険なことなのよ。小さな妹もいるのだからもっと考えて行動しないと」

なるべくキツイ口調にならないように気をつけながら、まずは無茶な行動を諌めた。

無理矢理馬車を停めようとするのは本当に危険で、大きな怪我をしてもおかしくない。

それに、この場ではあえて口にしなかったけれど、貴族の馬車を停めると不敬罪に問われてしまう恐れもある。護衛騎士が過激な性格ならその場で切られてしまうこともあるのだ。

だから二度とこんな事をしないように言い含めたかったのだけれど、ルカは私の言葉に耳を貸すことなく、苛立ったような大声を上げた。

「危ないのなんて分かってる！　でも他に方法が無かったんだから仕方ないだろ！」

私が怒鳴られたことで、控えていた護衛騎士達が間に入って来ようとする。

私が思っているより、騎士達はルカのことを警戒している様子だ。

「大丈夫だからあなた達は下がっていて。そんなに威圧感を与えてしまっては会話も出来ないわ」