紅の葬送曲
無意識に彼を呼んだ、その瞬間──。
「ぐ……っ!?」
くぐもった獣の耳の男の声が聞こえたかと思うと風が私の頬を撫でた。
「小鳥遊さん!」
首に圧迫感が無くなったのか小鳥遊さんは激しく咳き込んでいて、私はその背中を擦った。
風が通り過ぎた方に視線を移すと、小鳥遊君の首に巻き付いたワイヤーがブチブチと切れる音がする。
「あ……ぁ……」
小鳥遊君を抱えて、私の横に来た彼の姿に涙が伝った。
無力さを嘆いた涙じゃない。
助けを求めて、その人が来てくれたときの安堵から来る涙だ。
「怪我はないか?」
隣に来た彼はそう問いかけてきて、私が頷くとほっとしたような顔をする。
「寿永隊長、何で此処に……?」
「嫌な予感がしたから迎えに来た。多分、近くのカフェにいると思ったからな。江を頼む」
彼──、寿永隊長はそう言って小鳥遊君を私に託して、立ち上がると紅斗を睨んだ。
殺気を放っているから本気で怒っているようだ。