紅の葬送曲


「これは浅井秀人から父さん宛の手紙だが、中身はそいつへの手紙だ」




「何で周さん宛なのに、浅井さん宛の内容なの?」




佐滝さんが眉をひそめる。





「さぁな。その意図は差出人しか分からない。でも、俺が納得行かないのはそこじゃない」





「は?」





羽取さんは短い眉を極限まで持ち上げて、怪訝そうな顔をする。





「……この手紙おかしいと思わないか?」





おかしい?




私は手元にあった手紙に目を落とすと、宛名の他に不可解な点がないか探した。




近くにいた羽取さん達や小鳥遊君も私の手にある手紙を覗き込む。




何処も不可解な所なんて……。





「消印の日付……」




ふと、言葉を発したのは寿永隊長の隣にいた小鳥遊さんだった。





消印の日付?





封筒の左上に貼られた切手には消印が押されていて、日付は一昨日のものになっている。





……え、待って。




不可解な点にようやく気が付いた。





< 182 / 541 >

この作品をシェア

pagetop