紅の葬送曲
「これは浅井秀人から父さん宛の手紙だが、中身はそいつへの手紙だ」
「何で周さん宛なのに、浅井さん宛の内容なの?」
佐滝さんが眉をひそめる。
「さぁな。その意図は差出人しか分からない。でも、俺が納得行かないのはそこじゃない」
「は?」
羽取さんは短い眉を極限まで持ち上げて、怪訝そうな顔をする。
「……この手紙おかしいと思わないか?」
おかしい?
私は手元にあった手紙に目を落とすと、宛名の他に不可解な点がないか探した。
近くにいた羽取さん達や小鳥遊君も私の手にある手紙を覗き込む。
何処も不可解な所なんて……。
「消印の日付……」
ふと、言葉を発したのは寿永隊長の隣にいた小鳥遊さんだった。
消印の日付?
封筒の左上に貼られた切手には消印が押されていて、日付は一昨日のものになっている。
……え、待って。
不可解な点にようやく気が付いた。