紅の葬送曲
「あの人にとって俺は寿永の為に死ぬように産まれてきた存在。だから、愛する必要なんか無いんだろ」
「そんな……っ」
悲しそうな顔をする寿永隊長の言葉を否定しようとしたけど、上手く言葉が出てこない。
すると、彼は背凭れに寄りかかると上を見上げた。
「愛されるって何だろうな……」
ポツリと呟いた彼の言葉は決して難しいことではない。
それなのに、どんな言葉よりも重く難しく思えた。
「寿永隊──」
「寿永……凌様ですね?」
ふと、突然寿永隊長にスーツを着たサラリーマンが話しかけた。
見た感じ気の優しそうな男の人だ。
でも、何だろう。
嫌な感じがする。
「……そうですけど、何か?」
その嫌な感じを読み取ったのか、彼は体を起こしてその男の人を見た。