紅の葬送曲


「──死んでくれ」




男の人の右手が動いたかと思うと、寿永隊長に向けてナイフが振り下ろされた。





「寿永隊長!」




私はとっさにテーブルに足をかけ、男の人に飛びかかろうとした。




でも、既に遅かった。




「ちょっと歓談中だよ、おじさん。邪魔しないでくれる?」




ナイフを振り下ろそうとした男の人の手は彼の隣にいる小鳥遊君に止められていた。





小鳥遊君はナイフが握られた手を掴みながら椅子の背もたれを器用に飛び越える。





小鳥遊君がジャンプしたことで急に腕を上に上げられる形になった男の人は体勢を崩し、転びそうになる。





が、そこを小鳥遊君が支えた。





──までは良かった。





そこから小鳥遊君は男の人の腕を捻り上げて足掛けをすると、床に男の人を押さえ付けた。




「まったく、これだから中年は……」




「く……っ」






一瞬のことで私はテーブルに足をかけたまま止まってしまった。





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