紅の葬送曲
ふと、脳裏にさっきの現場の光景が浮かんだ。
さっき遺体に感じた違和感と寿永隊長達の異様な殺気。
まさか、あの遺体──。
私は信じたくなくて、隣の寿永隊長の腕を掴んだ。
「小鳥遊さんは……?小鳥遊さんは何処に……?無事なんですよね……?」
声が震える。
信じたくない、きっと私の思い過ごしだ。
自分にそう言い聞かせるけど、彼は感情が消え失せたような冷たい顔で目の前の敵を見据えながら言った。
「さっき見ただろう、河川敷で。──あの遺体が菖だ」
頭が真っ白になった。
あの傷だらけで残忍な殺され方をしたあの遺体が小鳥遊さん……?
「嘘だ!何で、小鳥遊さんが!?」
私は寿永隊長の腕を揺するけど、彼はこちらを見ない。
ただ、目の前の敵を見据えている。