紅の葬送曲


遡ること一時間前──。




「これは一体……」




呆然とする寿永隊長と同じように、私は呆けるしかなった。




何せ、私達の考えを全て否定されたんだ。




USBメモリーのデータを簡単に言えば、こうなる。




『紅斗と司馬琉介は秘密裏に協力関係にあり、共に切碕ヒカリの復活を阻止しようとしている』




『敵は紅斗ではなく、浅井秀人改め安倍明晴。寿永周氏を殺害したのは安倍明晴である』




つまり、紅斗は本当の敵ではなく、むしろ利害が一致する考えを持つ者だった。





「小鳥遊菖が俺の周りを探っていたようだったから紅斗に話した。そしたら、紅斗は彼女に接触し、俺達の関係を話した」




琉ちゃんは呆然とする私達に補足するように教えてくれる。




「でも、それが間違いだった。僕達と接触したことで明晴に目をつけられ、捕らわれてしまった」



紅斗は後悔しているのか、うつ向いて唇を噛み締めていた。








< 309 / 541 >

この作品をシェア

pagetop