紅の葬送曲
「ちょっと凌君?僕の妹にちょっかいかけないでくれる?」
紅斗の不満そうな声に、寿永隊長は鼻で笑った。
「浅井は俺の補佐官だ。これはちょっかいじゃなくて、上司としての指導だ」
「……何かその言葉厭らしく聞こえた。よし、決めた!僕が勝ったら紅緒を君の補佐官を辞めさせる!」
「はぁ!?」
紅斗の突拍子もない発言に、私は耳を押さえながらすっとんきょうな声を出す。
ちょっとちょっとちょっと何勝手なこと言ってるの、紅斗は!?
「ちょっと紅斗!何勝手なこと──」
「……良いだろう。俺が勝ったら、こいつに知ってることを全て話せ」
「寿永隊長!?」
本人の意見を聞かずに話を進める二人には似たものを感じ、いらっとした。
ふと、寿永隊長は私の方を見ると脱いだ上着を渡してきた。
「お前、俺が負けると思っているのか?」
いや、思ってませんけど……。
首を横に振ると、「なら、良い」と紅斗の方に歩いて行った。