紅の葬送曲
そんな凌君に寿永さんは笑うと、彼の頭をグリグリと撫でて額を彼の額にくっ付けた。
「……分かってるよ、俺はお前と汀の父さんだ。でも、分かってくれ」
その寿永さんの行動に、僕達は思い知らされた。
僕達がどんなに父親のようだと彼を慕っていても、本当の子供にはなれないって。
彼の本当の愛情を貰えるのは息子である凌君なんだって……。
「紅斗……」
それを紅緒も感じ取ったらしく、僕の服の裾を握ってきた。
僕はそんな紅緒の手に触れて、「大丈夫だよ、紅緒」としか言えなかった。
僕達は彼の子供じゃないし、それと同格の愛情をもらうことも出来ない。
でも、慕うことは出来る。
だから──。
「良し!凌、紅斗、紅緒!遊ぶぞ!」
「「「うん!」」」
僕達の傍にいてください、寿永さん……。
──でも、その幼い僕の願いは虚しい程呆気なく消え去った。
あの男のせいで──。