紅の葬送曲
寿永さんが僕達の元に来るようになってから一年がした頃。
「紅斗、紅緒。今日は君達を引き取りたいと言っている部下を連れてきたよ」
寿永さんが全てを壊したあの男を僕達の所に連れてきた。
「浅井秀人、最近翔鷹に入ったんだ」
「よろしくな、二人とも」
その男──浅井秀人は微笑みながら僕達に視線を合わせるように前屈みになる。
でも、その微笑みには違和感があった。
ふと一瞬、浅井秀人の姿が狐のような耳をした男に見え、何か呟いた。
寿永さんは聞こえなかったのだろうけど、僕にははっきり聞こえた。
『やっと見つけました、切碕様……』
確かにその男は僕達の実の父親の名前を呼んだ。
「この人……嫌だ……」
すると、紅緒が僕の影に隠れて浅井秀人を睨んでいた。
「紅緒……?」
寿永さんは僕達に近付いてくると、しゃがみこんで紅緒の顔を覗き込んだ。
「寿永さん、この人嫌だ……。私達をずっと探してみたいな顔してる……」
紅緒はこういう勘が鋭いらしく、敵と味方の区別をつける。