紅の葬送曲
多分、凌君は僕達が寿永さんを殺したと思っているだろう。
そうじゃなかったら、憎しみに満ちた目で僕達を見たりしない。
……もう全てが壊されてしまった。
もう僕達に優しく微笑みかけてくれる人はいない。
僕達のせいで殺されてしまった。
「紅斗……、私達……生まれてこない方が良かったのかな……」
動かない寿永さんを見つめる紅緒の頬に涙が伝った。
『生まれてきてくれてありがとう、紅斗。紅緒』
そう言ってくれた人は僕達のせいで死んだ。
──僕達は誰かの命を奪うために生まれてきたのか?
「……そうだね。バイバイ、紅緒」
頬に涙が伝うと、僕は紅緒をその場に残して逃げ出した。
──その後、紅緒は何事も無かったように駆けつけた浅井秀人にこれまでの記憶を消され、5歳までの記憶をわざと忘れさせられ偽りの記憶を埋め込まれた。
そして、養女として浅井秀人と名を偽った安倍明晴に育てられることになる。
切碕を蘇らせる道具として──。
≪紅斗side end≫