紅の葬送曲


紅緒がこんな風に言っているということは──。




「……さすがは切碕様の子供だ。勘が働くようですね」




浅井秀人は人とは思えない歪んだ顔を見せると、隠し持っていたナイフを取り出して振り上げた。




「逃げろ、二人共!」




寿永さんが僕達に覆い被さるように腕を広げると同時に呻き声と赤い何かが僕達に飛んだ。




触って見て、寿永さんが赤い水溜まりに倒れて分かった、それは血だ。





「……これで邪魔者はいなくなった。さあ、二人共おいで」




血に染まった手を差し伸べてくる浅井秀人から僕は守るように紅緒の前に立った。





「紅斗、逃げて!」




紅緒が僕の腕を引っ張って逃がそうとするけど、僕は逃げない。




紅緒を置いていけない……。





すると、バタバタと近付いてくる足音がする。




その足音に浅井秀人は逃げていった。





「父さん!」





足音と共に現れたのは凌君だった。






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