紅の葬送曲
「浅井さん、そんな顔しないで」
ふと、眉間を誰かにトンと押される。
無意識に顔を下げていたらしく、顔を上げるとそこには紅斗と話していたはずの詩依さんがいた。
「詩依さん、あの……」
「……母が眠り続けているのは貴女のせいでも紅斗君のせいでもない。悪いのは切碕を産み出した三名家と政府だから」
そう言って、詩依さんは悲しそうな笑顔を浮かべた。
詩依さんも母である冬雪さんと話したいはずだ。
それなのに、その元凶を作った男の子である私と紅斗を責めたりしない。
……寿永隊長もだけど、この人達は優しすぎる。
自分も辛いのに、人を優先する優しい人達……。
私は爪が手の平に食い込むほど強く拳を握り締めた。
「ほらほら、そんなに自分を追い詰めないでよー」
すると、羽取さんとやり取りをしていたはずの志摩さんがいつの間にか傍に来ていて、私の手を掴んでいた。