紅の葬送曲
あれはやっぱり寿永隊長だったのだろうか?
でも、もしも彼だったのなら何で姿を現さないのだろうか?
現せない理由でもあるのだろうか?
そんな疑問を感じていると、それを感じ取ったのか紅斗が皆の方を見た。
「皆さん、紅緒はまだ本調子では無いようなので今日はこの辺で……」
「そうだね。まさか、3日も目が覚めないとは思っても見なかったけど目が覚めて無事だったなら良いよ」
佐滝さんの発言に、私は「3日も!?」と裏返った悲鳴を上げてしまう。
「頭を殴られた衝撃でだと思うけど、検査の結果脳は異常はなかったから安心して。3日も目が覚めなかったのは疲れもあったのかもね」
藤邦さんの旦那さんの説明で納得したものの、あの日から3日も経っていたとは衝撃的だ。
「まあ、病室は空いてるからゆっくりしてきなよ。入院費やら治療費はうちで出しておくから」
ふ、藤邦さん……何という太っ腹……。
私のいる部屋は個室で大きな収納はもちろんお風呂や洗面所、トイレ、それに付き添いの人用のソファーベッドまで完備されている。
絶対高いよね、入院費……。
うん、此処は藤邦さんの言葉に甘えよう。
「ありがとうございます、藤邦さん」
「良いの良いの。じゃあ、またね」
藤邦さんはにかっと笑うと、皆を伴って病室を出ていった。