紅の葬送曲
頭を抱える私に、寿永隊長は呆れたようにため息を吐いた。
「お前、≪切碕事件≫は知っているか?」
≪切碕事件≫……?
そんな事件初めて聞いたはずなのに、何故か体の中の何かがざわついている。
『おいで、紅緒』
ふと、頭の中で誰かが私を呼ぶ。
声音が夢に出てきた男の子と似ているけど、何かが違う。
次の瞬間──、赤い両目の男が目の前に現れた。
「……ッ!?」
驚いた私はガタンッと音を立てて、椅子から転げ落ちる。
「大丈夫!?」
目の前にいた小鳥遊君が駆け寄って来た。
「怪我は?」
手を差し出して立たせてくれる小鳥遊君の問いに「大丈夫」と答えると、椅子に座り直す。