紅の葬送曲
「失礼しました。続けてください」
「大丈夫か?顔色が良くないようだが」
寿永隊長の問いかけに首を振ると、彼は眉をひそめながらも話を続けた。
「多分、お前は翔鷹の入隊試験を受けていないから知らないだろうな。……≪切碕事件》、それは翔鷹が出来たきっかけを作った事件だ」
寿永隊長は何も知らない私に、≪切碕事件≫のことを教えてくれた。
≪切碕事件≫は今から約20年前に起きた事件で、今回のように女性を中心に惨殺された事件のことだ。
犯人は≪切碕ヒカリ≫という政府の人体実験の末に産み出された人間で、冷酷非道の殺人鬼だった。
でも、そんな切碕も最期は一人の青年と共に命を落としたらしい。
そして、その切碕の生き残った仲間が人体実験のことを公にし、暴動が起こったことでそれを鎮圧するために翔鷹が作られたということだ。
「──で、今回の事件とその≪切碕事件≫が酷似していると?」
「ああ。これを見ろ」
寿永隊長は手元のパソコンを操作すると、モニターに別の映像を映す。