また君に恋をする
私の隣にいる奏多は、それだけ言って黙らせた。
「春翔、あと頼んだ。」
「はい。」
こっちをチラっと見て、春翔にそう言った奏多はまた男に向き直す。
「桃さん、行きましょう。」
「…うん。」
「大丈夫ですよ。」
納得しない私の顔を見て、そう言った春翔。
わかってる。
…そんなのわかってるよ。
奏多は喧嘩で負けなし。
怖いものなんて1つもないくらい強い。
だけど、今回はわけが違う。
「奏多…、」
彼だって、まだ高校生。
男にされた事を知って、奏多が離れていくんじゃないか、嫌われてしまうんじゃないか。
そう思うと、不安で押しつぶされそうだった。
「ちょっとだけ待ってて。」
私の声に振り向いた奏多は、ニコっといつものように笑ってそう言った。
「行きましょう。」
奏多を信じるしかないと思った私は、春翔の服をギュッと握って歩き出した。