昨日の夢の続きを話そう
「どんぐりも、飾ったら可愛いですね」


作業台に置いたボウルの中から、どんぐりをひとつ手に取ろうとしたとき。


「あ、でもちょっと待って、」


ルカさんに制され、手を止めた私はきょとんと見つめ返す。


「どんぐりは、一回茹でてからじゃないと。虫が出てきちゃうから」
「……」


頬の筋肉が硬直して、頭の中が真っ白になる。

むし、ムシ……虫⁉︎


「、キャー‼︎」


理解した直後、自制できない瞬発力で両目をキツくつむり、急いで手を引っ込めた私は慌てて近くにあったなにかにギュッと掴まった。

しばらく動けないままの時間が流れたあと。


「えっと……不可抗力、です。」


……へ?

ルカさんの焦ったような声が、思いのほかすぐそばで響いた。

目を開けた私はすぐにギョッとする。


「ご、ごごごごめんなさい!」


怖くて咄嗟になにかに掴まったつもりが、ルカさんの腰にしがみついていた私。

後ずさりすると、ルカさんはピンと伸ばした両手を挙げ、苦笑気味で静止している。

こ、これじゃあ私、ルカさんを襲ったみたいだし!

バカだ、私! ヤバい奴すぎる……!


「すみません、本当に! 私、虫がなにより苦手で……!」
「いや。澪ちゃんが謝ることないです」


ブリキの人形みたいなぎこちない動きで腕を下ろしたルカさんは、上目がちにこちらを見ると、鼻先を指で擦った。


「僕、今ラッキーだって思ってるし。」
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