昨日の夢の続きを話そう
『娘がふたりになったなんて、お母さんすっごく嬉しいな』
母はあの日、とても浮かれていた。小学三年生の秋祭りの日。
飼育係の仕事が終わった私は、学校から走って帰宅した。
気持ちがとても焦っていた。
時計が気になって仕方なかった。
だって、一年に一度、自然公園一帯にずらりと屋台が立ち並んで、なかでも子どもに大人気の木彫りのキーホルダー屋さんが来る日だ。
子どもたちの間で噂が広まって、隣町からも買いに来るお客さんがいるほど。
長蛇の列ができる前に、早く行かなくちゃ。
今年こそは、絶対に手に入れたい。
なにがなんでも、あの願いが叶う青い鳥のキーホルダーを買わなくちゃならない。
『澪は今年、青い浴衣を着るんだよね?』
母は浴衣を準備して待っててくれた。
母と仁さんの寝室になった、おばあちゃんの仏壇がある部屋で。
襖を開け、先客がいたことに気づいた私は、子どもながらに緊張し、顔を硬ばらせて頷いた。
私は今年の秋祭りは、青の浴衣で行くと去年から決めていた。
青地に白と薄紫の紫陽花の淡い色味が、友だちが着てるどの浴衣よりも大人っぽくて素敵だったし、それにおばあちゃんが母のために縫ってくれた、とても大切なものだって知ってたから。
いつか大きくなったら私も着たい、ってずっと思ってて、ようやく今年、体のサイズが、まだ大きいけどなんとか着られる位にまでなったのだ。
『じゃあ、香澄ちゃんにはこの、白い浴衣を貸してあげるわね』
そう言って、母が鴨居に掛けてあったハンガーを手に取る。
そのハンガーに掛かっていた白の方は、金魚の模様が描かれていた。
『……私、着なくていいです』
突っ立ったまま、下を向いていた彼女は、小さい声で囁くように言った。
剣がある、強い感じじゃなくて、すごくかなしそうな声だった。
母はあの日、とても浮かれていた。小学三年生の秋祭りの日。
飼育係の仕事が終わった私は、学校から走って帰宅した。
気持ちがとても焦っていた。
時計が気になって仕方なかった。
だって、一年に一度、自然公園一帯にずらりと屋台が立ち並んで、なかでも子どもに大人気の木彫りのキーホルダー屋さんが来る日だ。
子どもたちの間で噂が広まって、隣町からも買いに来るお客さんがいるほど。
長蛇の列ができる前に、早く行かなくちゃ。
今年こそは、絶対に手に入れたい。
なにがなんでも、あの願いが叶う青い鳥のキーホルダーを買わなくちゃならない。
『澪は今年、青い浴衣を着るんだよね?』
母は浴衣を準備して待っててくれた。
母と仁さんの寝室になった、おばあちゃんの仏壇がある部屋で。
襖を開け、先客がいたことに気づいた私は、子どもながらに緊張し、顔を硬ばらせて頷いた。
私は今年の秋祭りは、青の浴衣で行くと去年から決めていた。
青地に白と薄紫の紫陽花の淡い色味が、友だちが着てるどの浴衣よりも大人っぽくて素敵だったし、それにおばあちゃんが母のために縫ってくれた、とても大切なものだって知ってたから。
いつか大きくなったら私も着たい、ってずっと思ってて、ようやく今年、体のサイズが、まだ大きいけどなんとか着られる位にまでなったのだ。
『じゃあ、香澄ちゃんにはこの、白い浴衣を貸してあげるわね』
そう言って、母が鴨居に掛けてあったハンガーを手に取る。
そのハンガーに掛かっていた白の方は、金魚の模様が描かれていた。
『……私、着なくていいです』
突っ立ったまま、下を向いていた彼女は、小さい声で囁くように言った。
剣がある、強い感じじゃなくて、すごくかなしそうな声だった。