昨日の夢の続きを話そう
『あ……ちょっとこっちは子どもぽかったかな⁉︎ 香澄ちゃんはもう中学生なんだし、こっちの青い方がいいかな!』


急いでTシャツを脱ごうとしていた私は、その母の言葉に耳を疑った。


『えっ……でも、こっちは、私が……』
『澪、わがまま言わないの』
『……え……』
『あなたは白でもいいんじゃない? それかほら、去年着た黄色い浴衣もあるじゃない。ほらあの、向日葵の!』


名案を思いつき、ぱちんと両手を叩いた母は、『どこに仕舞ってたかしら』歌うように、嬉しそうに言って箪笥を開ける。


『ああ〜、ちょっと皺になってるけど、すぐアイロンかけるから待ってね』
『……や、やだ……』


絞り出すように、私は言った。

あの浴衣は去年ですら小さかったんだもん、もう袖が短いに決まってる。
それに正しくは黄色に向日葵じゃなくてヒヨコ柄だ。子どもっぽいを通り越して、赤ちゃん用だよ。


『私、青いのが着たい』
『澪!』


部屋中に響き渡った母の声は、これまで聞いたことがない類のものだった。
肩がビクッと大きく揺れて、その直後に小刻みに震えた。


『で、でも……』


今思えば、私もあんなに頑なに、こだわる必要なんてなかったのかも。
今思えば、ね。

母も、いきなりやって来た思春期真っ只中の仁さんの連れ子とどう距離を縮めていっていいか分からなかったんだと思う。

けど、そのときのまだ未熟な私の心はただただ純粋で、自制できなかった。


『いい加減にしなさい、澪! どうしてそうわがままばっかり言うの⁉︎』


頭ごなし、とは正にこのこと。

頭上から、母のヒステリックな声がガンガン降って来る。


『どうしてお母さんのこと困らせるの⁉︎』
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