昨日の夢の続きを話そう
頬を伝った涙がぽたりと、私の爪先に落ちた。

全身が震えていた。
どんどん涙が溢れてくる。

今日は大切な日なのに。
せっかく、やっと出来た家族と、一緒に浴衣を着られると思ったのに。

台無しにしたのは、私だ__。


『……困らせてるのは、そっちじゃないですか』


嗚咽を我慢しながら泣いていた私の耳に、隣から、囁く声がまた聞こえた。


『私は、あなたの娘じゃありません。ずっと、お母さんの娘だもん……』
『え? か、香澄ちゃ……』
『お母さんはひとりだから……お母さんは、この先もずっと、ひとりだから……』


私は少しずつ顔を上げた。

視界は涙でぐちゃぐちゃで良好ではなかったけれど、彼女の息遣いで泣いてるとわかったし、口を半開きにしたまま硬直するお母さんのなんとも言えない顔つきも、今でも鮮明に覚えてる。


『お母さんから、お父さんを、盗らないであげてください』


そんなつもり、ないよ。

そんなつもりは毛頭ないよ。


『盗らないでね?』


盗らないよ__。




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