昨日の夢の続きを話そう
仁さんには、娘さんがいた。
私より四つ歳上。母との再婚話が出た当時、多感な中学生。

仁さんと母は幼馴染みだった。ちょうど、私と和史のように。

家族のように接してきたふたりだったけど、恋愛にはならず、仁さんは別の人と結婚した。
母はそのあと、東京から宿泊しに来た(訳ありの)お客さんと恋愛関係になって、私を妊娠した。

おばあちゃんが亡くなり、未婚で子どもを育て、民宿をひとりで切り盛りしていた母はやがて、病気で妻を亡くし、看病のために離職し当時求職中だった仁さんと連絡を取り合うようになった。

幼馴染みで気心が知れている仁さんは、母にとって、精神的な支えだった。
それまで、母ひとり子ひとりで育ってきた私は、家族で民宿に泊まりに来るお客さんが羨ましかった。


いつか家族が欲しかった。
頼りになって、お母さんと仲良しなお父さん、優しくてお喋りなお姉ちゃん__それは正に、私がずっと幼い頃から思い描いてきた理想、夢、そのものだった。



その夢は叶ったと言える。
一時的にだけど。



『お母さんから、お父さんを、盗らないであげてください』


そう言い残し、彼女は三崎の宿を出て行った。

最初から、馴れ馴れしい母を嫌悪している様子は、幼いながらも私の目にはっきりと映っていた。

上手くいかないんじゃないか、って。いつかこの夢が、壊れちゃうんじゃないか、って。

だからどうしても、あの青い鳥が必要だった。願いを叶えてもらわなきゃならない。失う前に。

お母さんがもう、泣きませんように。
お姉ちゃんがかなしい顔をしませんように。
私たちが、幸せな家族になれますように__と。
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