昨日の夢の続きを話そう
「いえいえ」


パクリと口に入れると、イチゴの味がした。
ルカさんが小屋に貯蔵している真っ赤な木の実での一種なのではないか、と思ったが、キャンディーだった。ほのかな甘さが口いっぱいに広がる。


「美味しい!」
「でしょ?」


心臓がドキッと跳ねた。
いつの間にかルカさんの綺麗な顔が、更に接近していたから。

満足げに頬を綻ばせながらながら、首を傾げるルカさんから、私は恥ずかしくて顔を背けた。


「澪ちゃんの笑顔が見れて、良かった」
「えっ……」
「なんか今日、思いつめた顔してるからさ」
「……」


私はまた俯いて、自分の足元を見た。
眉間に皺が寄ってゆくのが、鏡なんて見なくてもわかる。


「……たしかに、今日はちょっと考えて、暗くなってました。幸せは、どこ行っちゃったかなぁ」


それは、窮屈な爪先にも、綺麗な夕暮れ空にもない。


「生きてる意味、あるのかなぁ、って……」


高卒で萩間荘に就職したのは、特別やりたかった仕事って訳じゃない。
萩間家のよしみで採用してもらえたようなものだった。

母と仁さんとは距離をとって、安いアパートにひとり、ただ毎日、惰性で過ごしているだけだ。


「……あ、重いこと言って、ごめんなさい……」
「ううん」


心ばかり微笑んだルカさんは、少し寂しげな横顔だった。
漆黒に飲み込まれていく前の、奇跡的にピンクの夕焼けが、感傷に拍車をかける。
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