昨日の夢の続きを話そう
「僕にとっての幸せは、家があって、寝床があって、美味しいご飯があること、かなぁ」


目線を斜め上にしたルカさんは、「あとまあ、毎日なにかしら仕事があって、話し相手がいて……」紡ぎだすように一言ずつ、丁寧に言った。


「ってなんか、当たり前のことだね」


そしてちょっとおどけたように、肩をすくめる。


「それに、あとから気づくこともあるよね。あのとき、幸せだったな、って」
「……たしかに、そうですね。幸せって、当たり前の生活のなかにあって、けど気づくのはあとになってから、なんですね」


私の当たり前の生活は、罪悪感と劣等感とで、常に支配されている。

心が家族の呪縛から、解かれることがない。うまく、割り切れない。


「あ、そうだ。いいことに気づいたんだけど……」


言いかけて、ルカさんは体を私の方に向けた。
夕陽できらめく水面を眺めていた私は、時間差で目線を合わせる。


「幸せって、手にとって確かめることは難しいから、自分の心で決めればいいんじゃない?」


正直、ピンとこなかった。

ぽかんと口を半開きにして、私は吸い込まれるように、ルカさんの茶色い瞳を見つめた。
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