昨日の夢の続きを話そう
「お前さ、意識失う寸前に、助けを呼ぶために走り去って行く青い影のようなものを見たって、おばさんに言っただろ?」
「う、うん……」


あの日、石の上に頭を叩きつけられて思考がプツンと遮断する直前。

うっすらと目を開けたら、青っぽい影が遠ざかって行く様子が見えた。でも、視界がぼんやりしていたから、輪郭とかまでちゃんと見えなくて。

青い鳥が、飛んでってしまったんだと思った。
ああ、行ってしまった、って。


「俺、部活の練習が終わって直で祭りに行ったから、小学校の青いジャージ着てて。おばさんが、俺だって思ったらしくて」


テーブルの上で交互に指を組んで、和史は硬い声で続ける。


「あの事故のあと、お前、しばらく話せなかったじゃん。ずっと学校も休んでたし……」
「……うん……」


事故のあと学校を休んでた私に、周りの大人たちはどう接していいかわからない雰囲気だったけど、根気よくお見舞いに来てくれて心を開いてくれたのは和史だった。


「だから、誤解を解くタイミングを逃しててさ。感謝されるのがいたたまれなくて、おばさんにはちゃんと話したんだけど」
「えっ?」
「あの事故のことを思い出すと澪がショックを受けて混乱するから、落ち着くまでその件は触れないでって言われて、なんかうやむやになってて……。ごめんな、今までちゃんと話せなくて」
「……」
「でも、澪を最初に発見して結子先生を呼びに行ったのは、俺じゃないよ。それは、たしかだよ」


あの事故の日ことを思い出したくないのは、たぶん、母の方だ。

どうして私が怪我を負ったのか、触れないで欲しいのは母の方だ。
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