昨日の夢の続きを話そう
「__澪? ……どうしたの?」


玄関前の掃き掃除をしていた母は、自転車の歪んだカゴを見て目を見開いた。


「もしかして、また転んだの?」


困ったように眉を下げ、黙っている私を上下に見た。
玄関の引き戸の脇に箒を立て掛け、ポストからはみ出したチラシを引き抜く。


「あら、公園の工事が始まるのね。ご迷惑をおかけします、って」


チラシに目を落とし、母は自然公園の方角に目をやった。


「マンションでも建つのかしら?」
「お母さん……」
「ん?」
「私、お見合いするよ」


ゆっくりとこちらに目線を送った母の手から、チラシがするりと落下した。


「ほ、ほんと⁉︎」
「うん……でも、代わりに、」
「嬉しいわ! ついにその気になったのね!」


大袈裟なくらい感動的な表情で、母はこっちに近づいて来た。


「良かった! 本当に!」
「あのね、代わりにお願いが……」
「お母さん、澪には幸せになって欲しいのよ……」


母は私に〝幸せな結婚〟をさせたいのだ。
まっとうな制度を利用して、堅実な幸せを掴んで欲しいんだ。

それは、贖罪?

それとも和史に失恋した私に同情してるの?
遠い日の自分と、重ね合わせて。


「今、釣書を持ってくるわね!」
「っお母さん!」


くるりと足元を弾ませて踵を返した母を呼び止める。
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