昨日の夢の続きを話そう
「やっぱり、私たちの結婚を、良く思ってないんでしょ?」


強い目力とは裏腹に、麻衣子の声は小さく震えている。


「いや、違……」
「和史が、好きなんでしょ?」
「あの、」
「結婚して欲しくないんでしょ?」
「……麻衣子、待っ」
「祝福してくれないなら、私に遠慮なんてしないでもっと早く素直に言えば良かったじゃん! こんな卑怯な真似なんてしないで!」
「……っ」


言える訳ない。
私には、そんな権利はなかった。

誰かと競ってまで、幸せを手に入れる権利なんて。


「おい、なにやってるんだ? 早くしないと、次の予定が……」


騒ぎを聞きつけたのか、和史がタキシード姿でやって来て、壊れたアーチと私たちふたりを見比べる。


「……なにがあったんだ?」


往生した様子で、和史はどちらにでもなく聞いた。

私は向こうから見えない角度で涙を手早く拭う。
そして、急いで丸太を掴もうとしたときだった。


「あのー。ちょっといいかしら?」


和史の背後からひょっこり顔を覗かせた人物を見て、驚きで涙が弾ける。


「結子先生!」
「せ、先生!」


振り向いた和史と私の声が重なる。


「お式の時間より早く着いちゃったの。三崎さんも萩間くんとこで働いてるって聞いて、懐かしくて。早く顔を見たくてね」


麻衣子も、登場した結子先生の方を緩慢な速度で見た。


「あなたが萩間くんのお嫁さんね。小学校の担任だった、二戸結子です。とてもお綺麗ね。本日はおめでとうございます」
「あ、ありがとうございます……」


和史と麻衣子が並んで一礼する。
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