昨日の夢の続きを話そう
踏み出す勇気もないくせに、中途半端に、そばに居たせいで。


「不安にさせてごめんね、麻衣子……」


私は麻衣子の目を見た。
もう何者にも気圧されずに、真っ直ぐと。


「おめでとう、麻衣子」


力強く、今度はちゃんと伝わればいいなと願う。
すると、向き合う麻衣子の目が徐々に見開かれた。

ぽんと肩を叩かれて、私は急いで振り向く。
穏やかな眼差しで瑠加さんが微笑んでいる。


「二戸さんっ! 私、画廊に勤めているので二戸さんの作品はかねてから存じ上げており、すごくファンで……! 美大生の弟が今度御社のコンペに応募するって、張り切ってます! お会いできて光栄です!」


表情を明るくさせた麻衣子は、一息に早口で言った。


「本日は本当にありがとうございました! とてもいい思い出になりました! 良かったらぜひ、二次会にもいらしてください!」


これまでよりオクターブ高い声色で、麻衣子は続ける。


「澪も! いろいろあったけど、これからも友達でいようね。私たち三人」


からりと晴れた、真っ青な空の下。
ガゼボの白い布が秋風にはためく。


「僕に感謝なんて、しなくていいです」


ことも無げに呟かれた瑠加さんの声は、とても澄んでガーデンに響いた。


「え……?」


まるで貼り付けたような不自然な笑顔のまま、麻衣子は首を傾げる。


「手伝ったのは、澪ちゃんのためなので。僕たちは、これで失礼します」


瑠加さんが私の頭頂部を軽く撫でる。

鳩が豆鉄砲でも食らったかのように、ぽかんと口を開けたままの麻衣子に対し、瑠加さんは会釈した。飾り気のない、されど包容力のある微笑みで。

見上げた私は西日が眩しくて、目を細めた。
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