昨日の夢の続きを話そう
「ごめんね、澪ちゃん」
「……え?」
「もしもあのとき、僕が話しかけていて、君の足を止めていたら、あの事故を防げたかもしれないのに。僕はあの頃日本語が苦手で、君に声をかけることを躊躇してしまった。イタリアに戻ったあとも、ずっと気になっていて」
「そ、そんな! 瑠加さんが謝ることなんて、なにひとつないですから……」
「結子おばさんに話を聞いたりしてた。いつか僕は日本に渡って、澪ちゃんに会いに来ようってずっと思ってた」
「……」
「それで、できれば知りたかった。倒れたあとも、なぜ何度もうわ言で〝ごめんなさい〟と呟いていたのか、って」


アパートの前に横付けされた、車のなかで。


「ずっと、あのときの苦しそうな君の顔が、忘れられなくて……」


瑠加さんは切なげに目を細め、ため息交じりに呟いた。
ハンドルに両腕を交差してのせ、私の顔を覗き込む。


「結子おばさんに、当時の教え子の結婚式に出席するって話を聞いたとき、ちょうど新しい事業であの自然公園跡地を買い取ったときでさ」
「……か、買い取る?」


ふっと口元を斜めにした瑠加さんは、頷く代わりに睫毛を伏せた。


「あのキャンプ場、競売なってて。僕的にはかなり思い入れがある場所だから、絶対手に入れたくて」
「か、買い取ったんですか?」


拍子抜けした声が出た。

競売って言ってもあの面積じゃ、想像つかない金額なんじゃ……?

え。
思い入れ、って、私のこと?


「うん」
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