昨日の夢の続きを話そう
助手席で硬直する私を、瑠加さんは抱きしめた。
これまでの朗らかな彼らしくない、がさつな加減で。真横からギュッとキツく。

そのくせ、腕力とは対照的に懐っこい動物みたいに、首筋をくんくんと優しく鼻先で擽って、驚きと緊張でただだらんとさせた私の手を掴む。


「……っあの、瑠加さん……?」
「なに?」


瑠加さんの顔が、鼻先がぶつかる距離に移動する。


「ま、待っ……」
「……手遅れ。」
「で、でも! 心臓が痛くて、あの、ドキドキし過ぎて……」


それに上気した頬は火傷したみたいに尋常じゃないほど熱い。

このままじゃ、ドキドキ過多で卒倒してしまうんじゃないか、って本気で思ってしまったとき。


「君に、ドキドキして欲しくてやってるんだ」


唇が触れる距離で、瑠加さんは掴んだ私の手を、自分の胸元に持ってった。
それはとても自然な成り行きで、隙のない所作だった。


「僕だってそうだよ」


密室に響くからか、囁く声には妙に色気がこもる。
お互いのドキドキが重なって、更に動悸の激しさが加速する。


「澪ちゃんが、こうさせてるんだ」


瑠加さんの前髪が、さらりと額を擽る。
チュッと控え目な音を立てた唇に、全神経が集中した。


「やっと、手に入った__」


カチカチと、ハザードランプが点滅する音が耳に届く。
それはまるで時計の針が逆回りに進む音のようだった。

十六年前に掴めなかった幸せを、遠回りしたけれど、私もようやく掴めるかもしれない。

瑠加さんと一緒なら。


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