昨日の夢の続きを話そう



小さい頃、白くて大きな一軒家が写っているポスターを見て、いつかこんな家に住んでみたいなぁと思った。

どこで、どんな状況でそのポスターを見たのかは覚えていない。お店だったか、駅だったか……。
もしかしたら、ポスターではなく映像かもしれない。テレビで見たのかもしれない。
しかしあまりに古い記憶なので、私のなかではポスターという静止画として、記憶に残っている。

その白い家の周りには、取り囲むように黄色い花が咲いていて、そのお日様みたいな絶対的に元気な色が、白い外壁にとてもよく映えていて、すごく素敵だなぁ。
この家に住んでる人は幸せなんだろうなと、うっとりしたのを覚えている。

たぶん、保育園に通う前くらいだったかな? お父さんがまだ一緒に暮らしていたときだ。

おばあちゃんと一緒に住むってなったとき、中学生なりに人生に絶望していた私は、控えめなトーンでお願いした。庭に黄色い花を植えたい、と。

おばあちゃんはその日のうちに、自転車でホームセンターに行って、マリーゴールドの苗を買って来た。自転車の籠から溢れるくらい、たくさん。

そして植えた。
たくさん、たくさん。
ふたりで手を真っ黒にして、ミミズにいちいちギャーギャー騒いで。

それはあのポスターで見た花とは違ったけれど、色は同じだった。秋には細長い種がとれて、それを大事にとって置いて、春に蒔く。
繰り返すうちに思った。私の夢は叶ったのだ、と。

家の外壁は真っ白ではないけど、両親はいないけれど。
私は、幼い日に想像した〝幸せの象徴〟のなかにいると。

__おばあちゃん、腰が悪くなってきたから、今年は香澄が草花のお世話をお願いね。
そしていつか香澄も、共に暮らしてゆくいい人と一緒に素敵な庭を作るんだよ__


「……おばあちゃん、ごめんなさい」


もうその夢は、遠く遥か彼方へ、消えて無くなってしまったよ。
< 19 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop