昨日の夢の続きを話そう
花時計カフェは全国に展開しているチェーン店。
環状道路沿いにドライブスルーもある大きな店舗がある。

お昼休みになり、私は前田さんの車に相乗りさせてもらって花時計カフェに向かった。
前田さんの愛車は八人乗りのファミリーカー。チャイルドシートが設置されている後部座席のそばの窓に、ぶら下がったクマのマスコットが揺れている。

現場から五分で到着した広い駐車場は、お昼時とあってけっこう混んでた。


「__いらっしゃいませ、お二人様ですか?」


自動ドアが開いた瞬間。
タブリエ姿の男性の店員さんを目の前にして、前田さんがピタリと静止した。


「は、はは、はい……」
「ただいま大変混雑しておりまして、カウンターでしたらすぐにご案内できますが、いかがなさいますか?」
「えっ、あの……! じゃあ、そっち、で」


前田さんは半歩後方に立つ私にちらちら目配せしながら答えた。

動揺するのも無理もない。
だっていきなり、モデルさんみたいなカッコいい男性がにっこりスマイルで出迎えてくれたのだから。

よく来るけど、見慣れない店員さんだなぁ……。

私たちはそのイケメン店員さんに案内され、カウンター席に座った。


「一瞬違う種類のお店に来ちゃったかと思ったわ」


熱心にメニューを見ていた私に、前田さんがひそひそ声で言う。イケメン店員さんが去って行った方を盗み見ながら。


「なんだか席に案内されるだけでも恐縮しちゃいますねぇ」


と私が言うと、前田さんは自分の格好を確認し、「作業服じゃなくてもっとマシな服に着替えてくれば良かったわー」なんてボヤいてた。
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